輪環の魔導師-闇語りのアルカイン

 さて、私が個人的に師匠と呼び崇拝している渡瀬草一郎先生の新刊がこのほど発売になったので読みました。
 冒頭でいきなり幼馴染が出現するあたり流石渡瀬ワールドというべきか。もし幼馴染が一切出ないシリ−ズが出たとしたらテレ東がアニメ放送を中止して緊急特番組むクラスの世界の危機フラグだよなあと黙考。

 この人の書く作品には常に優しさが溢れていると思う。
 陰陽では何度となくその優しさに泣かされたけど、その根本は新作にもしっかりと存在している。
 主人公とヒロインは言うに及ばず、紋切型になりがちな貴族のおじさんが領民を思いやり、最後には姪の行動を許す懐の深さをもっていたり町のおじいさんや旧ガキ大将がさりげない気遣いを見せてくれたりと、登場人物達が他者を思いやる精神を持っている。
 
 前シリーズである空鐘では謙虚で弟想いなブラドーお兄ちゃんが大好きでしたが、こういう風に「人っていうのは優しいものなのだ」という、本来当たり前のことを端々に感じさせてくれる作風は変わらないと思う。

 文章や情景描写の丁寧さも、いつもどおり見惚れましたね。
 何より定期的に次巻がでてくれるのが嬉しい。
 職人という言葉が当てはまりますね。

 作中の主人公祖父の評判って、もしや渡瀬先生本人のコト?